高齢者が日付を忘れると生活で何に困る?服薬・受診・予定を支える工夫

日付を忘れると生活で何に困る? 服薬・受診・予定を支える工夫。カレンダーを一緒に確認する高齢女性と家族のイラスト

「今日は何日?」と何度も聞かれる。
受診日ではない日に、病院へ出かけようとする。
お薬カレンダーがあっても、今日の薬を選べない。

こうしたとき、ご家族は「どうすれば日付を覚えてもらえるのだろう」と悩むかもしれません。

暮らしを支えるうえで確認したいのは、日付を答えられるかに加え、必要なときに日付を確かめ、予定や行動につなげられるかです。

日付を忘れることだけで、認知症と決まるわけではありません。医療機関では、症状の経過や検査結果などを合わせて判断します。1)

この記事では、ご家族が気づきやすい生活の困りごと、確認のポイント、家庭で取り入れられる工夫、相談の目安を紹介します。

目次

日付・曜日が分からないと困る生活場面

日付や曜日は、薬を選ぶ、予約を確かめる、サービスの利用日に備えるなど、生活のさまざまな場面で使います。

同じ「予定を間違えた」という出来事でも、今日が分からないのか、予定を忘れたのか、準備の途中で困ったのかによって、手伝う部分は変わります。

薬の管理:今日の薬を選ぶ、飲んだことを確かめる

曜日別のお薬カレンダーを使っていても、今日が何曜日か分からなければ、どのポケットから薬を取るか迷うことがあります。

一方、今日の薬を選べても、飲んだことを忘れて、もう一度飲もうとする場合もあります。「今日の薬を選べること」と「飲んだことを確認できること」は、分けて見ておきたい部分です。

薬の管理には、記憶だけでなく、表示の見え方、袋の開けやすさ、生活環境なども関係します。厚生労働省の指針でも、本人の生活状況を確認し、それに合う服薬支援を考えることが示されています。2)

困る部分を医師・薬剤師へ伝え、お薬カレンダーや一包化(1回分の薬をまとめて包装すること)、服用を確認する方法などを相談してください。ポケットが空でも、取り出しただけなのか、実際に飲んだのかは分からないことがあります。

薬の量や飲み方を自己判断で変えず、不明なときは処方した医療機関・薬局へ確認してください。 飲んだか分からないときは自己判断で追加せず、重複して飲んだ可能性があるときも、次の服用を含めた対応を速やかに確認します。3)

病院受診:予約の日と今日を照合する

予約票に「10月8日」と書かれていても、今日が何日か分からなければ、予約が今日なのか、まだ先なのかを確かめにくいことがあります。

「予約があること自体を忘れた場合」と区別し、日付表示と予約票を一緒に見て、今日の予定を確認できるかを見てみましょう。

受診日だと分かった後も、準備や出発で迷う場合があります。「10時に受診」だけでなく、「9時30分に家を出る」と、次の行動に必要な情報を添えることも一案です。

デイサービス・訪問サービス:今日の予定を確認する

曜日ごとの予定では、今日の曜日と、サービスの利用曜日を対応させる必要があります。

繰り返し聞かれるときは、「今日は水曜日です」に加え、「今日はデイサービスの日です。9時に迎えが来ます」のように、必要な予定を具体的に伝えてみましょう。

本人が何を気にしているかも聞いてみてください。「準備を忘れたくない」「相手を待たせたくない」といった気持ちや、体調・利用への不安が関係しているかもしれません。

ごみ出し・提出期限:日付と生活のルールを結びつける

「今日は何曜日か」と「何曜日に何をするか」を結びつける場面は、ごみ出しや書類の提出などにもあります。

収集日を間違えるなら「今日は燃えるごみの日」と今日の行動を示す、提出を忘れるなら準備する日と一緒に確認する人を決めるなど、困る場面に合わせて考えます。

期限が分かっていても、物を用意する、手続きを進める、済んだことを確かめる部分で手助けが必要な場合があります。

日付を確認して行動するまでの5つの確認ポイント

カレンダーを用意した後は、普段の生活でどのように使えているかを見てみましょう。

以下は、生活のどこで迷うかを、ご家族と整理するための確認ポイントです。作業療法士のくらりんが本記事向けにまとめたもので、診断や点数づけをするための検査ではありません。

確認する部分見ておきたい様子工夫の例
① 表示に気づく・読める表示を見つけ、文字や数字を読めるか普段見る場所に置き、文字の大きさや明るさを確かめる
② 今日を見つけるカレンダーから今日の欄を探せるか今日の欄を一緒に指す。今日だけの表示も検討する
③ 予定と照合する今日と、予約日・利用曜日を対応させられるか日付と「今日の予定」を近くに表示する
④ 行動する予定を確認した後、準備や出発を進められるか次の行動を短く伝え、必要なところを手伝う
⑤ 終えたことを確認する済んだことと、これから行うことを区別できるか実施後の印など、確認する人と方法を決める

例えば、数字は読めても今日の欄を探せないなら、文字を大きくするだけでは困りごとが残るかもしれません。

何度も日付を尋ねて試すより、実際の予定を一緒に確認し、どこに手がかりがあると使えるかを見てください。

2つの例で、支援する部分を考える

次のA・Bは、確認の視点を説明するために作成した例です。

例A:日付は答えにくいが、表示を使って予定を確認できる

Aさんは、何も見ずに日付を尋ねられると迷いますが、日付表示と予定表を見比べると、今日が受診日だと分かります。

この場合は、自分から表示を見に行けるか、準備や出発まで進められるかを確認します。本人が使える手がかりを生かし、困るところを手伝います。

例B:日付は答えられるが、薬を飲んだか分からない

Bさんは、日付を正しく答えられますが、薬を飲んだことを忘れて、もう一度飲もうとします。

この場合は、日付表示を増やすだけでは困りごとに対応できません。医師・薬剤師と相談し、実際の服用を確認する方法や、薬の管理方法を考えます。

このように、口頭で日付を答えられるかだけで、生活で必要な支援は決まりません。 表示や声かけを使ったときの様子も、支援者へ伝える手がかりになります。

家族が取り入れやすい表示・声かけ・更新の工夫

時計やカレンダーを置くこと、必要な情報を文字で伝えることは、国立長寿医療研究センターの医療者向け資料でも紹介されています。4)

以下は、こうした情報提示の考え方を参考に、家庭での使い方として整理した例です。本人の使い慣れたものから、一つずつ確かめてみましょう。

今日の日付と、その日の予定を近くに置く

カレンダーや予定表は、本人が普段見る場所に置き、予定を確認する場面で一緒に使ってみます。

例えば、日付と次の行動を、次のようにまとめて表示します。実際の日付・予約・出発時刻に合わせて書き換えてください。

今日は10月8日です。

今日の予定:病院受診

9時30分に家を出ます。

月全体の予定が分かりやすい人も、今日だけの表示が使いやすい人もいます。新しい道具を増やす前に、今あるカレンダーで、どこまで確認できるかを見てみましょう。

アラームを使う場合も、音に気づくだけでなく、何をする合図か分かるか、その後の行動につながるかを確かめます。

表示を更新する人と時間を決める

日めくりや手書きの予定表は、更新が必要です。「今日」の印が前日のまま、変更前の予約が残ったままにならないよう、誰が、いつ、表示を確かめるかを決めておきます。

本人が更新できる場合は、その役割を生かします。家族や支援者が確認する場合も、担当を共有しておくと、確認漏れに気づきやすくなります。

自動で日付が変わる時計でも、表示を読めるか、予定表と見比べられるかを確かめてください。

その場で必要なことを短く伝える

一度に多くの予定を説明せず、今必要な情報から伝えます。

  • 「今日は8日です。ここで一緒に確かめましょう」
  • 「今日は病院の日です。出かける時間も、ここに書いてあります」
  • 「準備が気になりますか。持ち物を一緒に見ましょう」

メモを残すなら、本人が見つけて読める場所に置きます。メモがあっても確認が続くときは、内容の分かりにくさや、不安にも目を向けてみてください。

表示に気づきにくい、準備の途中で気がそれるといった様子については、注意機能と日常生活の支援の工夫も参考にしてください。

同じ質問に繰り返し対応すると、ご家族も疲れてしまいます。本人に使いやすいことと、家族が無理なく続けられることの両方を大切にし、負担が続く場合は支援者と役割を分担してください。

医療機関・専門職に相談する目安と、伝えたい記録

徐々に増えた困りごとと、急な変化を区別する

日付の取り違えや予定の確認の難しさが続く場合と、いつもと明らかに違う混乱が急に起きた場合では、対応の急ぎ方が異なります。

変化の様子対応の目安
日付の取り違えが徐々に増えた、予定・服薬などの困りごとが続くかかりつけ医へ相談し、いつから、生活で何に困るようになったかを伝える。5)
急に会話がかみ合わなくなるなど、いつもと明らかに違う混乱が起きた次の予約や翌日の診療を待たず、直ちに救急受診する。5)
意識がない・もうろうとしている、急に呼吸が苦しい、突然ろれつが回らなくなる、急に片側の手足に力が入らなくなるすぐに119番へ通報する。6)

急な変化があるときは、記録をそろえるために受診や救急対応を遅らせないでください。

日頃の相談では、体調や症状の変化は医師へ、薬の管理は薬剤師へ伝えます。介護の方法や家族の負担については、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談できます。地域包括支援センターは、高齢者の総合相談を担う窓口です。7)

作業療法士などのリハビリ専門職には、生活での動作や、道具・環境の工夫について相談できます。

「日付が分からない」に、場面と手がかりを添える

相談するときは、日付を答えられたかに加え、実際に起きたことを伝えると、困る部分を共有できます。

記録するなら、次の内容から、分かる範囲をメモしてみてください。

  • いつから・どんな場面で: 気づいた時期、起こる場面や頻度。
  • 実際に起きたことと本人の言葉: 家族が見た事実と、本人が話した内容。
  • 一緒に確認したものと、その後の様子: 日付表示や予約票などで確認できたこと、なお難しかったこと。
  • 家族の困りごと: 確認の回数、見守りの負担、支援できる時間帯など。

書き方の例:

10月7日の朝、翌日の受診へ出かけようとした。本人は「遅れたら困る」と話していた。日付表示と予約票を一緒に見て、受診が翌日だと確認できた。

受診時は、お薬手帳など、服用中の薬が分かるものも用意してください。

まずは、本人や家族が困っている一つの場面を選び、どこで迷い、何があると確認できるかを見てみましょう。本人の希望も聞きながら、無理なく続けられる方法を支援者と考えていきます。

本記事は、公開資料を参考に、生活の確認と支援の工夫を整理した一般的な情報です。個別の診断や薬の処方・変更に代わるものではありません。

情報確認日:2026年10月17日

参考資料

本文中の番号は、以下の資料に対応します。確認ポイント、具体例、声かけ・記録の例は、資料を参考に、本記事向けに整理したものです。

  1. 国立長寿医療研究センター:認知症の検査
  2. 厚生労働省:高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)(2018年。「6.服薬支援」を参照)
  3. 医薬品医療機器総合機構(PMDA):医師から処方されたくすりを使用する場合の注意点
  4. 国立長寿医療研究センター:認知症・せん妄サポートチームマニュアル(2016年度版)(冊子内26頁。入院中のケアにおける時計・カレンダー、文字による情報提示を参照)
  5. NHS:Sudden confusion(delirium)(急な混乱と、徐々に進む変化の受診案内を参照)
  6. 総務省消防庁:救急車利用リーフレット(高齢者版)
  7. 厚生労働省:地域包括ケアシステム(「2.地域包括支援センターについて」「3.家族介護者支援について」を参照)

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この記事を書いた人

現役の作業療法士。

病院・デイサービス・訪問看護で、高齢者を中心としたリハビリに携わっています。

日々の臨床で「現場ですぐに使える教材がもっとあれば」と感じた経験から、脳トレ教材やぬりえ、リハビリプリントを作成し、無料で公開しています。

このサイトでは、病院・介護施設・ご家庭などで活用できる教材と、リハビリや介護に役立つ情報を、現場での経験をもとに分かりやすく発信しています。

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