「塗り絵を始めたいけれど、色鉛筆とクレヨンのどちらがいい?」
「細かい部分を塗りやすい画材は?」
「高齢の家族には、どんな道具を用意すれば使いやすい?」
塗り絵は、使う画材によって塗り心地や仕上がりが大きく変わります。
色鉛筆のように細かな部分を塗りやすいものもあれば、クレヨンのように広い面へ色をのせやすいもの、マーカーのようにはっきりした色を楽しめるものもあります。
大切なのは、「高齢者にはこの画材」と決めることではなく、本人の好みや手の使いやすさ、見え方、疲れやすさに合わせて選ぶことです。
この記事では、現役の作業療法士の視点も交えながら、塗り絵に使える主な画材の特徴と選び方、色選びに迷ったときのコツを紹介します。
塗り絵の画材は「塗りやすさ」と「楽しみ方」で選ぼう
画材を選ぶときに、「一番きれいに仕上がる物」を探す必要はありません。
例えば、
- 細かな部分をゆっくり塗りたい
- 少ない力ではっきり色を出したい
- 大きな面をのびのび塗りたい
- 淡い色を楽しみたい
- 色を混ぜたり重ねたりしたい
など、楽しみ方によって使いやすい画材は変わります。
また、高齢者では視力や手指の動かしやすさに個人差があります。視覚の問題があると、色の区別や細かな作業が難しくなることもあるため、「何が見やすく、扱いやすいか」を実際の活動場面で確認することが大切です。米国国立眼研究所(NEI)も、ロービジョンでは読書や色の識別などの日常活動が難しくなる場合があるとしています。
参考:National Eye Institute「Low Vision」
塗り絵に使える5つの画材と特徴
色鉛筆|細かな部分や色の重ね塗りを楽しみたい方に
色鉛筆は、塗り絵で最も使いやすい画材の一つです。
筆圧を変えたり、同じ場所へ何度か色を重ねたりすることで、濃淡をつけやすい特徴があります。
向いている場面
- 花びらや模様など細かな部分
- 色の濃淡を楽しみたい
- 少しずつ丁寧に仕上げたい
- 手や机を汚しにくい画材を使いたい
確認したいこと
細い色鉛筆は握りやすい方もいますが、手指の力が弱い方や細かな握りが難しい方には、かえって疲れやすいことがあります。
太めの軸、三角軸、グリップを付けたものなども試し、本人が自然に持てる形を選びましょう。
また、硬い芯は強く押さないと色が出にくいことがあります。筆圧が弱い方では、比較的柔らかい芯の方が使いやすい場合があります。
クレヨン・クレパス|大きな面を塗りたい方に
クレヨンやクレパスは、広い範囲へ色を付けやすく、鮮やかな作品を作りやすい画材です。
太いものなら握る部分も大きくなるため、細い色鉛筆より持ちやすい方もいます。
向いている場面
- 大きな花や動物
- 背景など広い範囲
- 強い筆圧をかけずに色を付けたい
- はっきりした色を楽しみたい
確認したいこと
細かな部分を塗り分けるのは難しく、手や紙が汚れやすいことがあります。
活動後の片付けも含めて負担にならないか確認しましょう。
マーカー・カラーペン|鮮やかな色を楽しみたい方に
マーカーは、強く押さなくてもはっきりした色が出やすい画材です。
塗る範囲が分かりやすく、色の違いを楽しみたい方にも向いています。
向いている場面
- はっきりした発色が好き
- 色鉛筆では色が薄く感じる
- 細かな部分をくっきり塗りたい
- ポップな仕上がりを楽しみたい
確認したいこと
紙によっては裏までインクが染みたり、線の外へにじんだりします。
使用前に不要な紙で試し、必要なら下敷きを入れてください。
また、キャップの開け閉めが難しい方もいるため、道具を扱う手順まで確認します。
パステル|淡い色やぼかしを楽しみたい方に
パステルは、柔らかく淡い表現を作りやすい画材です。
指や綿棒などを使って色をぼかすことで、色鉛筆とは違う仕上がりを楽しめます。
向いている場面
- 大きな背景
- 空や雲
- 柔らかい色合い
- ぼかしやグラデーション
確認したいこと
粉が机や衣類へ付着しやすいため、新聞紙や作業マットを敷くなどの準備が必要です。
粉を直接触ることを嫌がる方もいるので、本人の好みも確認しましょう。
水彩絵の具|色の広がりや透明感を楽しみたい方に
水彩絵の具は、水の量によって淡い色から濃い色まで変化させられます。
塗り絵というより「絵を描く楽しさ」に近い活動へ広げたい方にも向いています。
向いている場面
- 風景
- 空や植物
- 大きな塗り面
- 色を混ぜることを楽しみたい
確認したいこと
筆、水入れ、絵の具、厚めの紙など準備する物が多くなります。
水をこぼしやすい方や、複数の道具を扱うことが負担になる方には、支援者が準備を手伝う方法もあります。
「上級者向け」と決めつける必要はありません。細かな技術を求めず、大きな面に色を付けるだけなら楽しめる方もいます。
迷ったらどれを選ぶ?目的別の画材
画材選びに迷ったら、本人が何を楽しみたいかから考えます。
- 初めて塗り絵をする場合
色鉛筆やクレヨンなど、使い方を理解しやすく、準備が少ない物から試すと始めやすいでしょう。 - 力を入れずに色を出したい場合
柔らかいクレヨンやマーカーなどが候補になります。
ただし、持ちやすさや手の動かしやすさを実際に確認します。 - 細かな部分を塗りたい場合
先の細い色鉛筆やカラーペンが使いやすい場合があります。 - 大きな面を塗りたい場合
クレヨン、パステル、水彩などを選ぶと、細かな手指操作が少なく済みます。 - 淡い雰囲気を楽しみたい場合
色鉛筆、パステル、水彩などが向いています。
「どれか一つに決める」必要はありません。実際に2種類ほど試し、本人が使いやすいと感じるものを選ぶのがおすすめです。
高齢者の画材選びで確認したい6つのポイント
1.握りやすいか
太さや形によって持ちやすさは変わります。
本人が力を入れすぎず自然に持てるか確認します。
2.少ない力でも色が出るか
筆圧が弱い方では、色鉛筆を強く押し続けることで疲れてしまうことがあります。
使っているうちに肩や手へ力が入りすぎていないか観察しましょう。
3.色を見分けやすいか
似た色がたくさん並んでいると選びにくい方もいます。
視力や色の見え方に不安がある場合は、
- 使用する色数を少なくする
- はっきり違う色を選ぶ
- 色名を書いたラベルを付ける
といった方法も考えられます。
視覚に困難がある方では、日常活動自体に影響が出ることがあるため、塗り絵だけでなく生活全体で見えにくさがある場合は眼科などへの相談も検討します。
参考:National Eye Institute「Low Vision」
4.細かな操作が負担になっていないか
小さな色鉛筆を箱から取り出す、キャップを外す、鉛筆を削るなども活動の一部です。
塗ることはできても準備が難しい場合があります。
必要な部分だけ支援し、本人が自分で行える部分は残しましょう。
5.疲れやすくないか
長時間続ける必要はありません。
本人が楽しめる時間で区切り、疲れたら休憩します。
米国国立老化研究所(NIA)も、高齢者や認知症のある方の活動について、本人の能力や興味に合わせて内容を調整し、楽しめる活動を選ぶことを勧めています。
参考:National Institute on Aging「Adapting Activities for People With Alzheimer’s Disease」
参考:National Institute on Aging「Participating in Activities You Enjoy As You Age」
6.準備や片付けが負担にならないか
画材を出す・戻す・机を拭くといった手順が多いと、活動を始めること自体が負担になる場合があります。
本人が自分で始めにくい場合は、
紙と数本の色鉛筆だけを机へ準備する
など、始めるまでの手順を減らしてみましょう。
色選びに正解はありません
塗り絵で迷いやすいのが「何色にすればよいか」です。
しかし、基本的には好きな色を選んで構いません。
桜だから必ずピンク。
葉っぱだから必ず緑。
という決まりはありません。
本人が青い花を塗りたいのであれば、それもその方の表現です。
本人自身が「本物らしく塗りたい」と希望している場合には、写真や見本を一緒に確認するとよいでしょう。
大切なのは、周囲が「正解」を決めることではなく、本人がどのように仕上げたいのかを尊重することです。
色選びに迷ったときの3つの方法
好きな色を一色決める
まず、本人の好きな色を一つ選びます。
例えば青が好きなら、
- 水色
- 青
- 紺
のように近い色を追加していきます。
色数が多すぎて迷う方にも取り組みやすい方法です。
同じ系統の色でまとめる
赤・ピンク・オレンジなど、似た色を組み合わせると全体をまとめやすくなります。
色彩理論を覚える必要はありません。
「似ている色を何色か使ってみる」程度で十分です。
目立たせたい部分だけ違う色を使う
例えば、
- 花全体を淡い色
- 中心部分だけ濃い黄色
のように、一部だけ違う色にする方法です。
全部の色を考える必要がないため、色選びに迷いやすい場合にも取り入れやすいでしょう。
もっと塗り絵を楽しみたいときの工夫
色見本を作る
色鉛筆やマーカーは、芯やキャップの色と実際に紙へ塗った色が少し違って見える場合があります。
余白へ少し塗って、
「この青はこんな色」
と確認してから使うと選びやすくなります。
色見本そのものを一緒に作ることも活動になります。
画材を組み合わせる
例えば、
- 細かな部分は色鉛筆
- 背景はクレヨン
- 一部だけマーカー
という使い分けもできます。
ただし、使う道具が増えることで迷う方もいるので、本人の様子に合わせましょう。
季節をヒントにする
色を決められないときは、季節から考える方法もあります。
例えば、
春なら桜や新緑。
夏なら空や海。
秋なら紅葉。
冬なら雪景色。
ただし、これはあくまでヒントです。
季節の「正しい色」に合わせる必要はありません。
塗り絵をするときの環境も確認しよう
画材だけでなく、作業環境も塗りやすさに影響します。
明るさ
紙や色が見えにくくないか確認します。
まぶしさや影が強い場合は、照明の位置を調整します。
姿勢
足が安定し、肩や首へ余分な力が入らない姿勢を探します。
長く続けて前かがみになっていないかも確認しましょう。
紙の位置
紙が遠すぎたり、机の上で動いたりすると塗りにくくなります。
必要に応じて滑り止めマットなどを利用する方法もあります。
休憩
一枚を一度に完成させる必要はありません。
数分塗って終わる日があっても構いません。
翌日に続きを楽しむこともできます。
🌿 作業療法士からのポイント
画材選びでは、
「高齢者だから太いクレヨン」
「細かな塗り絵だから色鉛筆」
と、道具だけで決めないことが大切です。
同じ方でも、
- 細かい絵柄なら色鉛筆
- 大きな背景ならクレヨン
というように、場面によって使いやすい物は変わります。
まずは本人が実際に使っている様子を見て、
- 握りやすそうか
- 力が入りすぎていないか
- 色が見えているか
- 疲れていないか
- 本人がその画材を気に入っているか
を確認してみてください。
きれいに仕上げるための画材ではなく、ご本人が無理なく楽しめる画材を選ぶ。
これが一番大切だと考えています。
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まとめ
塗り絵には、色鉛筆、クレヨン、マーカー、パステル、水彩絵の具など、さまざまな画材を使えます。
それぞれに特徴がありますが、「一番よい画材」があるわけではありません。
選ぶときは、
- 本人の好きな画材か
- 握りやすいか
- 力を入れすぎていないか
- 色を見分けやすいか
- 絵柄に合っているか
- 準備や片付けが負担にならないか
を確認しましょう。
また、色選びに正解はありません。
本人が好きな色を使い、自分なりの作品を楽しむことを大切にしてください。
一枚を完璧に仕上げることよりも、「この色を使ってみたい」「今日はここまで塗れた」と思える時間を楽しめることが大切です。
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参考資料について
- National Eye Institute「Low Vision」
- National Institute on Aging「Adapting Activities for People With Alzheimer’s Disease」
- National Institute on Aging「Participating in Activities You Enjoy As You Age」


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