目次
1. はじめに
「高齢の家族が食事を始めても、なかなか箸(スプーン)が進まず、時間がかかる…」
「ずっと座っているので本人も疲れてしまい、介護する側も大変…」
こうした**「食事が進まない」問題は、介護の現場や家庭で頻繁にみられる悩みです。しかし、一言で「食事が遅い」といっても、その原因は1つ**ではありません。注意力・認知機能の低下、姿勢・環境の問題、食器の使いにくさなど、複数の要素が重なり合っているケースが多いのです。
本記事では、高齢者の食事が遅くなる主な原因を総合的に整理し、具体的な対策をわかりやすくまとめました。読者のみなさまが「まずどこから改善すれば良いのか?」を把握する手がかりになれば幸いです。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としています。医療行為や専門的な診断を行うものではありません。
誤嚥や嚥下障害(ムセが増えた・飲み込むのに時間がかかるなど)が疑われる場合は、必ず医療・介護専門家へご相談ください。
2. 食事が遅い・進まない5つの原因とは?
- 注意散漫・認知機能の低下
- テレビや周囲の雑音に気を取られてしまう
- 食器の使い方や手順がわからなくなる。
- 姿勢・環境の問題
- イスやテーブルの高さが合わず、前かがみや仙骨座りに
- テーブル上が散らかっていて集中しづらい
- 食器の扱い方・メニュー選択
- 持ち手が小さいカップや滑りやすい食器で、食べにくい
- 献立が本人の嗜好に合わず、食欲が湧かない
- 食べやすさに配慮していない
- 介護者・家族のサポート方法
- 見守りや声かけが少ない or 多すぎて逆に注意がそれる
- 食事に時間がかかることを前提にしたスケジュール調整ができていない
- 嚥下障害
- 飲み込みそのものに問題がある場合は専門的評価が必要
3. 注意散漫・認知機能の低下が原因の場合
3-1. よくある症状例
- テレビや雑音、会話に気を取られる(注意障害など)
- 食事が中断しがちで時間がかかる
- 失行症状や前頭葉症状(認知症・高次脳機能障害など)
- フォークやスプーンをうまく使えない、使い方がわからなくなる。
- 周囲の状況を気にせず、他者と話をしたり、注意しても話を続ける。
- 周囲に会話が多い→本人が会話に入りたがって食事どころではなくなる。
- レビー小体型認知症の幻視→食事に虫がいるように見えてしまい、食べるのを拒否…など。
3-2. 対策例
- 環境調整
- 食事中はテレビやラジオを消して刺激を減らす
- 照明を明るくし、食器や料理を明確に視認しやすい環境を整える
- 一口ずつの声かけ
- 「まずこのスープを一口飲んでみて」「そこにあるおかずを一口食べてみよう」など、段階的に促す
- 分かりやすい食器や盛り付け
- 大きくて持ちやすいスプーン、箸よりスプーンが使いやすい場合も。
- メニュー数を減らし、1品ずつ出すと迷いにくい。
- 注意力向上の取り組み
- まちがい探しや計算ドリルなどの脳トレを日常的に取り入れ、集中する習慣をサポート
- 過度な効果は断定できないが、継続することで意識の維持につながる可能性がある
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注意散漫が原因で食事が進まない高齢者への具体的対策|環境調整と脳トレ活用術
1. はじめに 「高齢者が食事を始めても、周りの音やテレビが気になり、一向に箸(スプーン)が進まない…」「会話ばかりして食べる時間が長引いてしまう…」といったケー…
4. 姿勢・環境の問題
4-1. 姿勢が不安定だと食べづらい
- テーブル・イスの高さが合っていない
- 背もたれにしっかり腰をつけられず、前かがみや仙骨座りになりがち。
- 脚や腰が不自然な角度になり、手元が不安定
- 車いすの場合、フットレストやクッションの調整が不十分だと食べにくい。
- (ソファーなど)椅子が柔らかい
- 座位姿勢が不安定となり、食事を口まで運ぶのに時間がかかる、こぼしやすい
4-2. テーブル周りの整頓
- 余計な物が多いと混乱する
- 調味料、複数のおかずが一度に並んでいると本人が迷いやすい
- 人通りが激しい場所
- 廊下に面した席などは気が散りやすい
4-3. 対策例
- 姿勢を安定させる道具を活用
- フットサポートやクッションを追加
- 90度に近い角度を意識し、背筋を支えやすい椅子へ変更
- 1品ずつ提供
- 食事の選択肢を減らし、迷いにくくする
- テーブル周りをすっきり保つ
- 必要な食器と料理だけを置き、余計なものを視界から外す
5. 食器の扱い方・メニュー選択
5-1. 食器選び
- 握りやすい箸やスプーン、持ち手付きカップ
- 手首や指の力が弱い方には取っ手が2つ付いているタイプなどが有効。
- 軽量食器・滑り止めマット
- 握力が弱い方でも持ちやすい
- テーブルと食器の間に滑り止めシートを使って、お椀や皿が動かないようにすることですくいやすさUP
5-2. メニュー選択
- 本人の好みを尊重
- 嫌いなものばかり並んでいると意欲が低下
- 好きなものから食べさせる、食べやすい形状にカットするなど工夫。
- 形状・色合いの工夫
- 食べやすい大きさ、すくいやすいトロミ加減などを調整
- 彩りがはっきりしていると認識しやすく、食欲も刺激される
5-3. 一口量の調整
- 大きいままだと噛むのに時間がかかる→適度に切り分ける
- 飲み物も一度に飲み切れない量を注がない→むせ予防にも
6. 介護者・家族のサポート方法
6-1. 適度な声かけ
- 焦らせない
- 「まだ食べてないの?」と責める口調はNG
- 「あと何口でも大丈夫?」「ちょっと休憩する?」と柔らかく提案
- 必要以上に話しかけない
- 注意が散漫な人に長々と話しかけると、食事どころではなくなるケースも
- 短いフレーズで具体的に
- 「ゆっくり噛んで食べよう」より、「まずはスープを2口飲んでみよう」など、一歩ずつ促す。
6-2. 時間配分の考慮
- 食事に時間がかかることを前提にスケジュールを組む
- 朝食の開始を少し早めにするなど、余裕を持たせる
- 途中で疲れを感じるなら一旦休む時間を作る
6-3. 自尊心を尊重
- できる部分は本人に任せる
- すべて介助してしまうと意欲が低下
- 成功体験が次の食事意欲につながる
7. 嚥下障害が疑われる場合
- むせが頻発する、飲み込みに時間がかかるなどの症状は嚥下障害の可能性があり、専門家の評価が必要です。
- 食形態(刻み食・ミキサー食など)の変更や嚥下リハビリなど、医師や言語聴覚士などの専門家に相談しましょう。
8. まとめ:多角的な視点で「食事が遅い」原因を探ろう
- 原因はひとつに絞れない
- 注意力低下、姿勢・環境、食器・メニューの選択ミス、介護サポートの方法など、さまざまな要因が重なり合っているかもしれません。
- 小さな対策を積み重ねる
- テレビを消す、姿勢を正す、食器を工夫するなど、まずはできることからスタート。
- 長期的な視点も大事
- 注意障害が疑われる場合、まちがい探しや計算ドリルなどの脳トレを習慣づけるのも一案。
- 嚥下障害があれば専門家の診断やリハビリが不可欠。
介護者・家族の皆さんも焦らず、少しずつ日常を見直すことが、本人にとっても安心できる食事環境につながります。何よりも「本人が安全に、食事を楽しめる」ことがゴールです。
免責事項
- 本記事は医療行為や治療を目的としたものではありません。
- 食事に時間がかかる要因が嚥下や病気由来かもしれないと感じたら、必ず専門家(医師や介護のプロ)へご相談ください。
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