目次
1. はじめに
「車いすのブレーキをかけ忘れて立ち上がり、転倒してしまう…」「ブレーキかけずに座ろうとしてケガをしそうになる…」といった声を、介護・看護の現場でよく耳にします。
高齢者や認知症、高次脳機能障害(注意障害など)を抱える方には、“当たり前の手順”を見落としてしまうリスクがあるのです。本記事では、車いす利用者がブレーキのかけ忘れで転倒してしまう原因と、実践的な対策をわかりやすく解説します。さらに、注意力低下の予防策としての脳トレもあわせて紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
免責事項
本記事はあくまで一般的な情報提供を目的としており、医学的・専門的アドバイスや治療を行うものではありません。健康状態や転倒リスクが高い場合、必ず医療従事者や介護専門家(作業療法士・理学療法士・ケアマネージャー等)にご相談ください。
2. そもそも、なぜブレーキかけ忘れが起こるのか?
2-1. 認知症や高次脳機能障害(注意障害)による不注意
- 注意力の低下
- 車いすから立ち上がる際、「まずブレーキをかける」というプロセスをうっかり見落としてしまう。
- 判断力や記憶力の衰え
- 「ブレーキをかけなきゃいけない」という知識があっても、瞬間的に意識から抜けてしまう。
- 実行機能の低下
- 行動を順序立てて行うのが難しくなるため、「ブレーキをかける→立ち上がる」という段取りが崩れやすい。
2-2. 普段から習慣化されていない
- **「車いすブレーキ→移乗」**の手順がしっかり定着していない場合、注意力に問題がなくてもかけ忘れることがある。
- 介護者や周囲が「ブレーキをかけてあげる」のが当たり前になっていると、本人が自発的にかける意識が薄れがち。
2-3. 周囲の環境や時間的な焦り
- 急いでいる時
- 食堂やトイレ、リハビリ室への移動など「早く行かなきゃ」と焦ると、安全確認がおろそかになる。
- 物理的な視覚サイン不足
- ブレーキのレバーが見えづらい位置にある、もしくは目立たない色で、意識が向きにくい。
3.転倒のリスク:どんなシーンが危険?
- 立ち上がる時(メインケース)
- 車いすが後ろに動き出し、不安定な姿勢のまま転倒。
- 座る時
- 車いすを固定しないまま後ろに腰掛けようとしてしまい、車いすが逃げて尻もちをつく。
- ちょっとした方向転換時
- 立ち上がる予定はなかったが、身体を前に乗り出したり、落ちた物を拾おうと身を乗り出すうちに車いすが動いて危険。
4. 対策1:物理的な工夫でブレーキをかけ忘れにくくする
4-1. ブレーキレバーを見えやすい色に
- 赤や蛍光色のカバーをつけるなど、ブレーキ部分を強調。
- 「ブレーキレバーを視覚的に強調するだけで、注意が向きやすくなる」報告もあります。
4-2. ブレーキ付き車いすの選択
- 一部には自動ブレーキ機能や座面から立ち上がろうとするとブレーキがかかる仕組みを備えた車いすも存在。
- 病院や施設では導入にコストがかかる場合もあるため、家族や管理者と相談する。
4-3. 車いす周辺に「ブレーキかけ忘れ防止」の張り紙やステッカー
- 車いすの背面やアームレスト部分など、視界に入りやすい場所へ「ブレーキかけましたか?」という注意喚起シールを貼る。
- 高齢者本人だけでなく、介護者や家族も意識が高まり、声かけしやすくなる。
5. 対策2:手順を習慣化する・家族やスタッフのサポート
5-1. “声かけ”や合言葉の徹底
- **「ブレーキOK?」**と短いフレーズを日常的に使う。
- 家族や介護スタッフが立ち上がる瞬間を見かけたら、必ずブレーキの確認を促す。
5-2. 手順表やチェックリストの活用
- 「1. ブレーキをかける → 2. 足元を安定させる → 3. 立ち上がる」など、簡潔な手順表を車いすに貼る。
- 病院・施設なら、個人のケアプランに記載しておくとスタッフ間の共有もスムーズ。
5-3. 環境設定を見直す
- 手の届きやすい高さにレバーを調整しておく。
- 自宅なら、立ち上がる頻度の高いスペース(リビング、トイレ付近など)に注意喚起のポスターを貼る。
6. 対策3:注意力を高めるトレーニング(脳トレ)で防止につなげる?
6-1. 注意力低下を補う脳トレの可能性
- 注意障害や軽度認知症の方は、視野が狭くなったり、一度に複数の行動を処理するのが難しくなる場合があります。
- 脳トレを継続することで、集中力や注意力の維持につながる可能性が示唆される研究も。
- 過度な期待は禁物ですが、日常の習慣として取り入れる価値はあるかもしれません。
6-2. 当サイトの脳トレPDF紹介
- まちがい探し、抹消課題(特定の文字や数字を消す作業)など、注意力を刺激する問題を無料公開中。
脳トレ教材(抹消課題のPDF)はコチラ - 短時間でも毎日コツコツ取り組むことで、「注意する」という意識を高める補助になると期待できます。
6-3. 専門家との連携も大切
- 高次脳機能障害や認知症が疑われる場合、医師や理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職に相談するのがおすすめ。
- 個々のレベルや症状に合わせた注意力トレーニングを提案してくれます。
7. まとめ:転倒予防の鍵はブレーキ習慣+注意力アップ
- 物理的対策(レバーを目立たせる、ステッカー、ブレーキ付き車いすなど)
- 習慣化・声かけ(「ブレーキOK?」と短い合言葉で定着を図る)
- 注意力低下を見据えた脳トレ(まちがい探しや抹消課題で普段から注意力を意識)
いずれも過度な期待は禁物ですが、合わせて取り組むことでブレーキかけ忘れによる転倒リスクを減らすヒントになります。もし本人の症状が重い場合や、転倒が頻発する場合は、速やかに医療機関やリハビリ専門職、ケアマネージャーへ相談することをおすすめします。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的アドバイスや効果を保証するものではありません。具体的な治療・リハビリ計画については、医師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門家、ケアマネジャーへご相談ください。
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